赤坂の路地裏に佇む瀟洒な空間、白椀竹快楼。シノワズリーの粋を集めた典雅な空間に突如現れる、青い火を噴き上げる鍋。腕を振るうのは白石淳料理長。「寧夏でこの鍋を食してから、これは日本でやるしかないぞ! と思いましてね」血色のよい頬をほころばせ、青白い火柱を前に豪快に笑う。
「涮羊肉(シュワンヤンロウ)」をご存じでない方も、ラムしゃぶのルーツと言われればイメージが湧くのではないだろうか。白石料理長は涮羊肉と出会った中国西北部、寧夏回族自治区を、自ら足繁く訪れ、現地の食材を厳選。ひと皿ひと皿に本場の息吹を丹念にふきこんでいる。
▲笑顔で羊愛を語ってくださった白石シェフ。
前菜は優雅な空間にふさわしい華やかな装い。海月の冷菜、羊舌、羊脳の青唐辛子醤、あひるの水かきの黄ニラ添え、干し豆腐。リズミカルな味の前奏の後は、いよいよ豪快な炭火焼きの時間に。
「羊は広東料理出身の僕に中国料理の奥深さを教えてくれた大事な素材。羊の扱いは体に染みついています」赤々と燃え滾る炭火の上で、白石料理長が羊肉串、羊腰串、羊排骨を軽やかに焼き上げていく。もちもちとした歯ごたえがたまらない羊肉。特筆すべきは腰串(腎臓)の抜群の鮮度! くどさやくさみを全く感じず、独特の歯ごたえが生きている。そして排骨のさわやかな脂。つるつると食べられてしまう。メインの鍋が来る前に、かなりのボリュームのはずだが、「羊には小麦を合わせるのがベスト!」と白石料理長お墨付きの老北京芝麻焼餅、葱油餅もおやつ感覚でスイスイ入ってしまう。どっしりした小麦の食感、羊の脂と合わせると味わいに透明感がでるのだ! 中毒性のある取り合わせである。
▲伝統料理からオリジナルまで多彩な料理が並ぶ。
そして白石料理長の白い歯こぼれる笑顔とともに、真打ち登場。青白い火柱とおびただしい湯気が噴き上がる涮羊肉鍋が姿を現す。羊肉は厚みがある手切り肉。立ち上る湯気におっかなびっくり、鍋に羊肉をくぐらせる。泳がせた肉が淡い薔薇色に変われば食べごろ。旨い! たっぷりとした歯ざわりの羊肉にノックアウトされる。ゴマダレ・みじんの香菜・葱・麻辣油のつけダレも痛快なアクセントを添える。
「僕、羊は自分で熟成しているんです。最低でも3週間は熟成させ、味を見ます。肉の表情が変わっていくのを見ていけるのがとても楽しいですね。冷凍庫は、そう、戸棚みたいなものかな」鍋にスープを足すやかんを片手にフフフと笑い、ワインを口にする。「手切りの肉で、食べたあと皿に赤い血が残るようなのはダメ。もっと寝かせてやれば、羊の味は深くなるんです」一方でラムしゃぶによくあるロール肉に関しては、「ふぐ刺しのように、一気に何枚もまとめて一口で食す。ほわッと口の中に羊の香りが広がります。それもまたよいものです」と、あまねく羊肉に愛を感じるコメント。
▲手切りの肉が涮羊肉によく合う。奥が熟成させたマトン。
涮羊肉鍋を羊肉とともに盛り上げる共演者たちは、青梗菜、白菜、長芋、蓮根、湯葉と、いずれも歯切れの楽しさを味わえる。〆の麺まで食べ飽きない、コースの組み立ての素晴らしさ。
気がつけば涼しげな茜色の氷菓子と餡巻の食後の一皿。なんと、これはクコの実のシャーベットだという。パウダリーな甘みと上品な香り。羊をたっぷり堪能した舌にやさしい食後の一品である。
「このクコの実も寧夏で見つけてきたものです。乾燥状態から戻した時の味と香りがほかのものとは比べ物になりません」と白石料理長は語る。そういえば食前のお茶、お凌ぎのおつまみにもクコの実がふんだんに添えられていた。小さな金魚を思わせる赤い実を手のひらにのせて愛おしげに語る料理長。豪放磊落で多弁、エネルギッシュな魅力をたたえた料理長だが、素材に対する繊細な眼差しも印象的だ。
▲この独特の鍋と火力が涮羊肉の特徴。
「羊が僕の視野を広げてくれ、たくさんの引き出しをくれました。羊という素材は、僕の中に、深く根付いています」
白石料理長の羊愛をこれでもかと詰め込んだ、白椀竹快楼の涮羊肉コース。今月から提供を開始している。涼しくなり始めた今の季節にぴったり。本場の涮羊肉をぜひとも貴方の舌で、目で、堪能してほしい。
▲瀟洒な店構え。 ※提供:際コーポレーション株式会社
【店舗詳細】
●店舗名:白碗竹筷樓 赤坂店
●電話番号:03-3585-4657
●料理ジャンル:北京料理
●住所:〒107-0052 東京都港区赤坂4-2-8
●営業時間:
【ランチ】
11:30~15:00(L.O. 14:30)
【ディナー】
月~金 17:30~22:00(L.O. 21:30)
土日祝 17:30~21:30(L.O. 21:00)
●定休日:なし
●座席数:92席
●個室の有無:有
●禁煙席有無:全席禁煙(喫煙所あり)
●URL:https://kiwa-group.co.jp/baiwan_akasaka/