▲前から2列目、左から2番目が太田シェフ
料理人として日本からイタリア、スペイン、ペルーと、渡り歩いた太田シェフ。羊というと特にイタリアとペルーでよく食べたという。
イタリアでは、羊の端切れ肉とジャガイモをローストしたものがまかない料理の一つだった。メインとして提供したラムの残り肉、脂身が多めなので、しっかり火を入れ羊の香りがしっかりと感じられるシンプルな料理だ。仔羊に香草や松の実などをすりつぶしたペーストを塗って土の中で蒸し焼きにした料理も懐かしいと太田シェフは語る。いずれも家庭料理でイタリアではよく食べられているものだ。他にも、中〜南部ではモツ(内臓肉)も良く食べる地域ならでは、羊腸をネギに巻きつけて焼いた料理など、ラム肉が家庭で広く食べられている国では、レシピの数も食べられる機会も日本の比ではない。
ペルーではラム肉の煮込み料理やローストがよく食べられるという。ただし、ここでは唐辛子が加わる。ペルーでは、数え切れないほど多種多様な唐辛子がある。辛味はほぼなく、トマトのようにフルーティなものから旨みのたっぷりあるものまで、唐辛子が野菜の一種として使われ、彼の地で欠かせない食材なのだ。ここでも羊肉が地元の料理として馴染んでいることがわかる。
▲羊肉とジャガイモのシンプルな料理
振り返って、日本では羊肉が和食で使われている食材でしょうか、と太田シェフは問いかける。日本でもフレンチやイタリアンでは今、当たり前のようにある羊肉だが、もっともっと身近に和食や、さらに地方の一般家庭でも食べられるようになることをもって初めて、ラム肉が第4の肉としての地位を確立したと言えるのではないか、と。手に入りやすくかつ羊肉独特の香りが穏やかなオージー・ラムだからこそレストランだけでなく家庭でも使いやすい食材のひとつであるはず、ラム肉と魚介類を合わせてもいい、鶏肉とラム肉を合挽きミンチ肉にしてもいい、と羊肉の可能性を広げるアイディアはどんどん出てくる。
現在は店舗を持たず、他の料理人に対する食材の提案や一般の消費者へ向けたイベントなどを通じて、ペルーのアマゾン食材の普及を図る太田シェフ。羊肉が当たり前に食べられる世の中にするためには、という問いに対しても様々なアプローチがあることを提示する。好きな人たちだけで消費するだけではなく、多くの人に美味しさを知ってもらうためには、という課題に対する活動はとどまるところを知らない。
太田 哲雄
1980年、長野県白馬生まれ。
19歳で伝手もなくイタリアに渡って以降、料理人としてイタリア、スペイン、ペルーと3カ国で通算10年以上の経験を積み、2015年に日本に帰国。
イタリアでは星付きレストランからミラノマダムのプライベートシェフ、最先端のピッツァレストランで働き、スペインでは「エル・ブジ」、ペルーでは「アストリッド・イ・ガストン」などに勤務。
現在は料理をする傍ら、アマゾンカカオ普及のため幅広く活動している。