ラムバサダー第1期の石井氏はイタリア・トスカーナ州が認定するオリーブオイルソムリエの資格を持つフードコンサルタントである。ラムバサダーフェスティバルや羊フェスタで石井氏のラムチョップソースやバクテーを味わったことがある人も多いのではないだろうか。彼女は、母主催の外国人向けに英語でレシピを教える料理教室を間近で見て育った。そんな中、世界の食文化に興味を持ち、10代からアメリカやイタリアへ渡り、世界の郷土料理や食文化を学んできた。
オリーブオイルの専門家としてはもちろん、和・洋・中・韓国料理などの幅広い知識に基づいて、食に関する様々な仕事に携わっている。レストランのプロデュース、企業向けのレシピ開発・監修、料理教室に加えて、プロスポーツ選手のトレーニング専属シェフや陶磁器の産地アドバイザーなど、ここでは紹介しきれないほどだ。
オージー・ラムの特徴は、気候が安定した牧草地で放牧飼育される期間が長いことから、1本ラムチョップを食べるだけでも肉の旨味、食べ応え共に満足感がある点だという。そんなラム肉に合わせるには、「レストランの付け合わせならピスタチオのマッシュポテトやグレービーソース、マスタードピクルス、スパイスなども素敵です。家庭ならラムをオリーブオイル、ニンニク、塩胡椒、で焼いて仕上げにレモンもよいですね。オーストラリアでは色々な部位を自由に焼くラムバーベキューも定番です」と、様々な視点に立ったコメントが石井氏からは溢れ出てくる。
ラム肉を焼くときは「エキストラバージンオリーブオイルやピュアオリーブオイルも有効です。ニンニクなどで香味油を作ってもよいですね」とアドバイスをする。「塩、胡椒、ローズマリーでマリネしたラムラックをフライパンで脂部分から香味油でじっくり焼き、オーブンにいれたラムラックローストはおもてなしにぴったり」とのこと。また、日本古来の油なら、胡麻を蒸して絞る太白胡麻油や米油が無臭に近く、繊細な子羊を焼く場合には相性がよいそうだ。
今後のラムバサダー活動としては、ディレクターを務める中目黒のビストロNYONYA(ニョニャ)や自身の取り組む食文化を発信する鎌倉のSHIKA LAB.(シカラボ)でオリーブオイルと羊肉料理の教室を開催することを計画中だ。
石井氏直伝! ラム肉とオリーブオイルのマッチング
オーストラリアでは、オリーブも盛んに栽培されているオリーブ畑にも行きました。オリーブオイルには、実を収穫する時期や品種、絞った品種のブレンドにより、風味や味わい、香りのカテゴリーによって、マイルド・スライドビター・ストロングと、大きく3つに分類されます。
グリルによく使用されるラムチョップやラックなど、肉の味わいが繊細な部位には辛味や苦味の少ないマイルドな味のオリーブオイルが肉や脂の甘味を引き出す。煮込みやラムステーキグリルに使うもも肉や、赤身と脂身のバランスが良く、ジューシーさが味わえる肩ロースや肩肉には、カテキンなどの風味が喉にピリッとくるようなオイルが合います。スライドビター〜スパイシーなオリーブオイルを使うと肉の旨味を爽やかに、脂を軽い風味にして、美味しさを際立たせます。
ハーブやスパイスを肉に揉み込む際にも、それぞれ旨味の異なる肉の部位に合った調味料のバランスを意識すると、オリーブオイルひとつとっても、新たな味わいの相乗効果を感じますよ。
石井 秀代
フードクリエーター/オリーブオイルソムリエ
新加坡肉骨茶(シンガポールバクテー)、ビストロNYONYAディレクター
http://hideyoishii.net
長崎県出身。青山学院大学卒。
母主宰の料理教室「アメリカ人に日本の家庭料理」で英語のレシピで教える姿を見て、ワールドワイドな料理に興味を持ち、14歳で米国ワシントン州、15歳で米国テネシー州、18歳でイタリアへ渡り、広く郷土料理の食文化に触れる。2003年から世界を飛び回り、メニュー開発や出張料理教室などの活動を行う。
2006年にイタリア・トスカーナ州にて、日本人初となる「AISOイタリアオリーブオイル協会オリーブオイルソムリエ」の認定を受け、現地のメディアなどで話題に。その後、オリーブオイルのコンサルティングを始める。
美容と健康に良いオリーブオイルの特性を活かし、イタリア料理に限定せず、和洋中韓国料理などに取り入れた様々なメニュー開発を行う。その傍ら、ヨーロッパの食文化や地域性の研究についても発信している。
新加坡肉骨茶
http://www.sgbkt.jp
ビストロNYONYA
https://www.instagram.com/bistronyonya/