北インド出身の祖父を持つシャンカール・ノグチ氏は、スパイス貿易を生業とする家の3代目にして、スパイスハンターであり、東京スパイス番長かつカレー将軍という多様な肩書きを持つ。有名インド料理レストランなどに高品質のスパイスを卸している一方、スパイスに関する本の執筆、また自らイベントに立ち料理教室を開催したり、シェフと一緒にレシピ開発をおこなう等、スパイスの多様な使い方を提案している。
今、注目しているのは独特なスモーキーな香りのする「ビッグカルダモン」。(ブラックカルダモンやワイルドカルダモンとも呼ばれ、グリーンカルダモンとは異なる。)このスパイス、ラム肉のような少しクセがある食材と合わせるのがおもしろいのだという。そこでできたレシピが「ラムキーマカレー」。ビッグカルダモンを中心にシナモン、メース、クローブ、ブラックペッパーなどを合わせて、さらにパクチーは葉と茎と根に分けて、それぞれ調理をして加える。こうしたちょっとした手間と、ラムひき肉とビッグカルダモンという個性が強いタッグによって完成したカレーは焼いた塊肉をシンプルに味わうのとはまた違った味の体験ができる。ちなみに、このカレーにはワインも合うとのこと。
▲同じくラムバサダーで中華の東シェフ(中央)、ラーメンクリエーターの庄野氏(右)と。多彩な人たちとのコラボもシャンカール氏の魅力。
以前より羊肉は食材として使っていたが、ラム肉の伝道師ラムバサダーになってから、まだ輸入量が少ないオーストラリア産チルド肉を扱う機会が増えたそうだ。この貴重な羊肉を活かしたイベントは好評で、ラム肉を使った料理教室は大人気。毎回違うレシピで、何度も回を重ねている。
都内はもちろん、地方のイベントでスパイスを使った料理を提供する機会も多く、現地の生産者の提供する食材を使うことも多い。こだわりの生産者の食材はもちろん焼くだけでも美味しいが、スパイスが加わることで地元の人には食べたことがない料理に変貌する場合がある。普段、エスニック料理を食べ慣れてないおばあちゃんやおじいちゃんであっても、「カレー」というと食べてくれて、さらに美味しいと言ってくれることが多いという。牛肉や豚肉、ヤギ肉の生産者とイベントを共同で開催しており、今後は地方の羊農家とのコラボレーションにも期待したい。
シャンカール・ノグチ
1973年、東京生まれ。アメリカ留学後、インド人の祖父が立ち上げたインドアメリカン貿易商会の3代目社長に就任。
日印混合印度料理集団「東京スパイス番長」に所属し、インドの食世界を紹介する本「チャローインディア」を毎年出版。著書に「スパイス選びから始めるインドカレー名店のこだわりレシピ」、東京カリ~番長メンバー共著「世界一やさしいスパイスカレー教室」「ハーブ&スパイス事典 世界で使われる316種」(増補改訂版)がある。
2016年に本格カレーが作れるスパイスセットを届けるサービス、AIR SPICEをスタートさせ、さらにINDIA SPICE & MASALA COMPANY ブランド商品を製造販売、スパイスハンターとしてスパイスを探す日々を過ごしている。