オージー・ラムは日本への羊の輸入量の6割〜7割を占めます。また、羊肉の99%は輸入ですので、オージー・ラムの動向は密やかに、そして確実に日本のラム肉界に影響を与えます。そのオージー・ラムの最近の流れとしては、チルドの輸入がじわじわと増えていることです。つまり、冷蔵便。オーストラリアから海外に出る羊肉の3割は冷蔵で運ばれるとのこと。確かに、町で「生ラムジンギスカン」等の表示を見る機会も多くなってきました。
日本人の癖かもしれませんが、海外産より国産。冷凍より冷蔵。とおっしゃる方が非常に多いです。そして、冷凍より冷蔵! ということにも確かに一理ありますが、それだけではありません。今日はこのあたりを全体的な観点から考えていきたいと思います。
1. 冷蔵は本当にベストなのか。
羊の扱いに慣れたプロが使う分には冷蔵は最適です。なんせ凍らせてない肉が届くわけであり、新鮮な状態が味わえるからです。「なんだ、改めて話すまでもないじゃないか!」と思った方、ちょっと待ってください。あくまで「プロが使う分」にはなのです。
実は、チルドは美味しいのですが扱いが難しいところがあります。すぐにスーパーで買ってご家庭で食べる、扱いの慣れたお店で使う、ならいいのですが、品質の保持が難しいという側面もあります。冷凍は決められた温度で保管すれば2年保ちます。しかし、冷蔵はそんなことはありません。何回も冷蔵庫を開け閉めしている温度差、光などですぐに劣化してしまうのです。
つまり、「チルドを使えばいい!」ではなく、「冷凍も冷蔵も正しく特性を理解して使う」ことができて初めて、ベストな羊肉となるのです。
2. 冷凍を忌避するのは間違い。あくまでケースバイケース。
ということで、冷凍の良さは上で書いたように、品質を安定させ、みんなで美味しい羊を好きな時期にお手頃価格で食べられる! ことです。冷凍だから・・・・・と決めつけるのは大きな間違いで、使う人、場所、料理などにより、選択するべきことです。
現在、冷蔵技術もですが、冷凍技術もすごい進化してます。安定を取るために、チルドより冷凍を勧めるプロもいるくらいなのです。
なので、条件反射的に「チルドはフローズンより良い!」と思い込むのは注意が必要です。どちらがいいか??論ではなく、「このケースはどちらががいいかな??」で考えるべきなんですね。なので、どちらかがいいか悪いか?と考える時点でちょっとちがうかな?と思うのです。
私は消費者なので、鄧小平の「黒猫でも白猫でもネズミを獲る猫がいい猫だ」ではありませんが、「チルドでもフローズンでもケースバイケースで美味しければいいラム肉だ」的に考えるので、こだわらずに、皆さん状況に合わせて使い分ければいいじゃないか! とおおらかに考えています。消費者の皆さんも先入観に囚われず、ラム肉を楽しんでいただければと思います。
この記事を書いた人
ラムバサダー 菊池 一弘
羊肉の消費者団体、羊齧協会創業者にして主席(代表)。
羊肉料理を素人がおいしく楽しく食べられる環境作りを行うべく、多種多様な羊肉普及のためのイベントを行う。
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