今日は、羊活動をしていると本当によく聞かれる「羊の品種」の事をオージーラムの観点からまとめてみました。
日本ですと、「羊=サフォーク種」と認識を持っている人が多く、「美味しい羊だけどもしかしてサフォーク?」などと話す方も結構いらっしゃいます。確かに、サフォークは肉質も良く早く体も大きくなり優秀な品種です。しかし、オーストラリアでは「二元交配」が主流で、とくに輸出向けのラム肉は品種を謳うよりも「最高のラム肉」を作ることに生産者は注力しています。
それでは、二元交配の良さは何なのか??いきなり「二元交配」と言われてもよくわからないと思うので、下記図をご覧ください。
このように、オーストラリアは「メリノ種(羊毛種)」に肉用種を掛け合わせ、そこで生まれた子(この世代を一元交配と呼ぶ)にさらに肉用種を掛け合わせたものが2元交配、つまりプライムラム(最高のラム)となります。
「なんでそんな面倒な事を・・・」と思われるかもしれませんが、これは、大変理にかなった方法です。羊は品種により特徴があります。体が丈夫で病気にかかりにくい種類、乾燥に強いなど環境変化に強い種類、肉質が良い種類、一度の出産で双子以上を産む種類、早熟早肥の種類などなど沢山の種類があります。
歴史的にはオーストラリアは羊毛産業で栄えた国でした。それが90年代以降から世界的にウールの需要が下がったと同時に羊肉産業へとシフトしていくことになります。
そもそもは、ウール(毛)の中でも最高級と言われるメリノ種の飼育が盛んだったため、その名残からオーストラリアには今でもメリノ種が沢山います。これがオーストラリアの基本品種となり、丈夫なメリノ種(羊毛種)に肉用種を2回掛け合わせることで、肉としても美味しい羊を作ったり、多産の羊を作ったりと、生産性と肉質を上げる工夫をしているのです。
主にメリノに掛け合わされるのは「肉質が良いサフォーク種」「多産性で繁殖性が高いドーセット種」が多く、この交配でオーストラリア大陸に適した「肉質が良く、生産性が高く、気候風土に対応できるタフな羊」が生産されます。
オーストラリアは、百数十年前より羊肉・羊毛の輸出が国を支える基幹産業の一つ。
歴史の積み重ねと、現代技術が混ざり合い、生産者にも、企業にも、消費者にも、そして羊にも最適な品種や飼育状態を見つけるため、日々研究が繰り広げられています。安定した味や、供給量(世界的羊不足で希少性が高まってはおりますが)の背景には、このような地道な努力があるのです。(実際、日本でも牛肉や農産物も同じように日々品種改良の研究をしていますよね。)
今回は、やや突っ込んだ話ですが、知っていると一段と羊肉に対する理解が深まると思い、まとめさせていただきました。
この記事を書いた人
ラムバサダー 菊池 一弘
羊肉の消費者団体、羊齧協会創業者にして主席(代表)。
羊肉料理を素人がおいしく楽しく食べられる環境作りを行うべく、多種多様な羊肉普及のためのイベントを行う。
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