こんにちは。ラムバサダーの菊池です。今回は、肉というより「羊」そのものの日本でのお話です。たまには、こういう話もいいのではと思いまして、まとめてみました。
日本では、明治期に至るまで羊を飼っていませんでした。江戸時代長崎奉行が肥前で飼育を試みたり、江戸の小石川薬園で飼育したりとわずかに事例はあるのですが、うまくいかずに家畜として日本に根付く事はありませんでした。それ故、江戸の人は羊を見たことがありません。日本最古の図入りの百科事典「訓蒙図彙」には羊の項目があり、羊という動物がいるという認識はあったのですが、挿絵はどう見ても山羊だそうです。
羊は昔から非常に知名度が高い動物です。そう、十二支に入っているからです。しかし実物を誰も見たことがない。なので、想像で書くしかなかったんですね。鳳凰や龍などと同じく、羊がいない日本では今では誰でも形を知っている羊を、想像で書いていたかと思うと非常に面白いですね。
それだけ、以前は羊は日本には馴染みのない海外の生き物だったのです。おそらく、ほそぼそと海外から連れてこられたりはしたのでしょうが、日本の高温多湿の気候などで、家畜として固定化しなかったこと、仏教に基づく肉食を忌避する考え方も「羊家畜化しよう!」とならなかった原因でしょう。
しかし、時代が新しくなるにつれて、浮世絵などに出てくる羊が山羊より羊に徐々に似てきます。それは、見世物で象やラクダなどを見せてお金をとったように、羊も見世物などで見る機会があったのではないかと、国立民族博物館の大久保純一先生はおっしゃっていました。
日本では馴染みが全然なかった羊。昭和30年代には100万頭近く日本にも羊がいましたが今は18,000頭ばかりしか日本にはいません。ほぼ99%が輸入です。江戸時代と違い、羊の形は皆さんすぐに思いつきますが、口に入る肉はほとんど全部輸入となります。それを考えると、今も昔も日本と羊の関係はあまり変わらず「海外からくる物」なのかもしれませんね。
今回は、羊絡みの小ネタ話でした。
この記事を書いた人
ラムバサダー 菊池 一弘
羊肉の消費者団体、羊齧協会創業者にして主席(代表)。
羊肉料理を素人がおいしく楽しく食べられる環境作りを行うべく、多種多様な羊肉普及のためのイベントを行う。
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