こんにちは。ラムバサダーの菊池と申します。羊肉についてコラムを担当することになりまして、今回より不定期で羊について書かせて頂きます。今回はよく耳にする「羊の香り」についてまとめてみました。
日本ではよく「羊肉は臭い」と言われます。しかし、これは私からしてみると「保存状態が悪く、適切な処理がされていない羊肉しか食べてない」という事を告白するようなものじゃないか・・・・と感じています。
羊肉の「におい」は草食動物が草を分解する過程で出てくるものです。つまり、これは羊に限らず、草食動物全般に共通するにおいなのです。牧草牛(本来の草食動物の牛)にも「におい」があり、これを業界用語で「グラス臭」と言います。
また、食べ慣れているかどうかも関係していると思います。例えば、北海道の人は羊肉のにおいにはあまり気づかず、むしろ牛肉を「くさい」と言う人がいます・・・結構います。
牛肉などに匂いが少ない理由は、穀物を与える事が多く、草と穀物のバランスによります。羊も穀物を与える場合がありますが期間は短く、雨が少なく餌となる草が少ない状況(季節)の時に最後の「仕上げ」のために短期間(約2週間)で大きくするため穀物を与えるぐらいです。
その理由は、ラムが一定の重量にならないと高く売れないからです(一定の重量は、各農家やセリ場によってまちまち)。もし草が潤沢にあれば、オーストラリアでは基本的には穀物を与えません。意図的にビジネスで「穀物肥育ラム」を作る場合は例外です。ですので、羊肉はグラス臭が他の家畜に比べて強いのです。
これだけではありません。羊の香りは、肉その物の匂いと言うより、保存の仕方によって大きく左右されるのです。
羊の香りは特に脂肪に由来するもので、この脂は非常に酸化しやすく、一度酸化してしまうと独特の癖のある「臭い」が強くなるのです。羊肉はきちんと保存し調理されていれば、臭くはありません。「香り」があるだけです。つまり、鮮度管理や処理の仕方次第で、羊肉の「香り」にもなるし、「臭い」にもなるのです。
お肉の保管には5℃以下が理想的とされています。真空パックにされてから流通を経て、調理の直前に真空パックを取るその直前まで、いかに一定の温度を保つか、これがとても重要なのです。「羊肉は臭い!」と思っている人や、羊肉で嫌な経験をした人の多くが、品質の悪い羊肉を食べた人と言えるでしょう。これは、羊自体の問題というより、肉に携わる人、流通に携わる人、調理する人が取り扱い方をしっかりと意識するだけで羊肉ファンを増やすとも言えるのではないでしょうか。
実は、冷蔵(チルド)で輸入されたラム肉でも、保存期限が近づくと「臭い」が出てくる(腐っているわけではありません)、温度が1℃変わると品質が変わると言われるほど、羊肉は繊細な食材です。羊肉を扱う際にこういった点に気を配るだけで全然違います。羊に限らず、肉の扱いをみると日本人はまだ肉食に慣れていないな……と感じるわけなのです。
菊地 一弘
羊齧協会 主席
株式会社場創総合研究所 代表取締役
一般社団法人 来来県 代表理事
羊肉の消費者団体、羊齧協会設立者にして主席(代表)。羊肉料理を素人がおいしく楽しく食べられる環境作りを行うべく、月例イベント、羊フェスタ、羊齧落語、羊齧合コンなど、切り口を変えた羊肉普及のためのイベントを行う。月例イベントは6年連続満員御礼。100席のチケットが3時間で売り切れるほど協会には「羊愛」の強い会員が揃う。会員数は都内を中心に1,700名(2018年8月現在)。毎月数十名規模で拡大中。15名の幹部を置き、組織化しているのが大きな特徴。東京の本部のほか、関西支部を神戸に、北東北支部を八戸に置く。また、日本初のラム肉レストラン本『東京ラムストーリー』を監修するなど、活動は多岐にわたる。
羊齧協会 http://hitujikajiri.com/
一般社団法人 来来県 http://lailaipref.or.jp/